2016-10-24

「晴 耕 雨 読」




「晴耕雨読」それは私の理想の生き方です。
卒業を前に、これからどう生きていったらいいのか思い悩んで迎えた修養会
その会場に、大書されたこの言葉がありました。
探し求めていた、人としての「最も自然な生活」とは
つまり「晴耕雨読」ではないかと。

その後、幸いにも夫の郷里で暮らすようなり、
畑に30種程の野菜を育てながら、自給自足を目指しています。
初夏から秋口までは、野菜の世話や草刈りに追われ、
木工の仕事は手付かずでしたが、漸く復活です。

先日実家に行った折、父に頼んで
筆で、「晴耕雨読」と書いてもらいました。
若き日に胸を熱くしたこの言葉を

いつか彫ってみたいとの願いが、やっと実現しそうです。


2016-07-06

 楢のカッティングボード




このブログを見た友人からカッティングボードの注文がありました。
ご結婚された2人のお子さんの分と合わせて3枚。
有難いことです。

普段カッティングボードの樹種は桜系を使うことが多いのですが、
「やっぱり私は楢がいいナ」と彼女。
私が修行していた先生の木彫教室に通っていた彼女は、
楢の木の家具など、使い込まれた素敵なものを沢山見ていたのでしょう。
(ちなみに36年前に作って今も愛用している私のカッティングボードは楢です)

そこで、ナラ1枚、シウリザクラ2枚で作ることにしました。
これからお名前と記念の年号を彫って、オイル仕上げします。

もったいないから飾っておくと言う娘さんに、使ってこそ良くなるのだからと、伝えてくれたそうです。
彼女は、使い込んだものの良さをよく知っているのです。

彫っていても心がウキウキする楽しい仕事でした。  感謝



2016-05-05

「フウセンカズラ」のペンダント





フウセンカズラをご存知でしょうか。
つる性の植物で、緑のカーテンとして注目されています。

夏には白い細かな花を咲かせ
その後、黄緑色の紙風船のような実をつけます。
風に揺れる風船の楽しげな様は、心を和ませてくれます。
その実が茶色に変わる頃
中には、球状の黒い種が3つずつ出来上がっています。



この種の可愛らしさは、
黒い中に、はみ出さんばかりの白いハート型の模様があるところです。

友から分けてもらった4粒の種が、2年の間に何十倍、何百倍となり
私の周囲にもフウセンカズラの輪が広がってきました。


クルミ 4.5φ × 1.5  オイル仕上げ

その友が、暫くチリで暮らすことになりました。
地球の反対側に旅立つ彼女に、何か私のできることはないかな
「クルミの木が好き」と言っていた彼女に
クルミの木でペンダントを作ろう
丸っこくて 、手で握ったり摩ったりできる形に・・・

その時頭に浮かんだのが、フウセンカズラの種です。
ちょっと小さいけれど
ハートの形のくり抜きを入れました。

春の風を受け、ペンダントも気持ち良さそうに揺れています。


2016-02-14

Christ is the head of this house


栓 300x300x20

母校の食堂にこの言葉を彫った木の壁掛けがあります。
8年間の在学中、ずっと生活の中心にあった言葉です。

Christ is the head of this house
the unseen guest at every meal
the silent listener to every conversation

キリストはこの家のかしら
すべての食事の見えざる客
すべても会話の黙せる聞き手

縁あってこの言葉を彫る仕事をいただいてから早30年。
最初は彫りだけを受け持ちましたが、その後
木材の調達、加工、塗装、金具付けまで一貫して任され製作しています。

今は年間10枚程度ですが、20~30枚彫った時期もありました。

今年も新年早々、大切な言葉を彫る仕事ができ、嬉しく思っています。



2016-02-07

物 々 交 換



10年程前、母校の卒業生会のセールに
木のスプーンを作って出したことがあります。
隣のテーブルでは陶芸をしている友が
可愛らしい小物を売っていました。
そろそろ終了かなとの頃合いをみて
私たちの取っておきの方法が始まりました。
「物々交換」です。

私の木のスプーンが
彼女の作った素敵なクリスマスのオーナメントやメモ立てに早変わり。

毎年クリスマスが近づくと
どんなに忙しくてもリースを作り
彼女のオーナメントが輝くのです。

お金にはあまり縁の無い人生ですが、
お陰様で、心豊かに暮らしています。

キノ、あなたの作品は
いつも私たちの心を和ませてくれています。
これまでも、そしてこれからも ずっと

ありがとう

また会う日まで 神のまもり 汝が身を離れざれ (賛美歌405)

2016-01-26

ペザントチェア



家具の中でも椅子は取り分け魅力的に思います。
木工の修行を始めた時、いつかは自分も椅子を作れるようになりたいと思っていました。

ペザントチェアは、座板に穴をあけ背板や脚を打ち込み、楔(くさび)で止めたシンプルな構造。
それだけに、座をえぐったり面を取ったり、背板や脚の傾きなど
より座り心地や使い勝手の良い椅子になるよう心を配ります。
脚の開きも前後同じではなく、前脚は左右に張るように、後ろ脚は後方に突っ張るようにします。
そこに人が座ることを考えて。
脚先をどこに持って行きたいかによって、脚の角度や向きが決まるわけですが、
その理屈が分かった時は、何て面白いんだろうと思いました。

念願叶って、初めて作ったのがこの椅子です。
背板はもともと反りがあったので、それを活かして僅かに湾曲させ、体への当たりを和らげたつもりです。

一人暮らしを始めたアパートに持ち帰った日から35年。
私にとっては長い付き合いですが、この椅子の一生はまだ始まったばかり
(そうあって欲しいと願っていますが・・・)

人よりすっと長い寿命を持つ木の家具。
その年月に耐えられるよう

丈夫で飽きのこないものを作りたいと思っています。


2015-12-27

木版画の年賀状




今年も年賀状を書く時期が巡ってきました。

94歳になる実家の父は、毎年木版画の年賀状を送ってくれていました。
毎年の年賀状を改めて並べてみると
勤勉な父の人柄まで伝わってくるようです。
この1枚に込めた父の思いに、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
歳をとるに連れ、彫ることが難しくなり
2回程私が代わって彫りましたが、刷るのも大変になり
最近は朱筆で言葉を書いてくれています。




今年父は書くことも負担になってきたようで、
母の提案で、父の字のハンコを作り、それを押したらいいのではないかと。
そこで、版作りのため私に声がかかりました。

ハンコは出来上がり、先日実家に送りました。
ただ、昨年父が練習のため半紙に書いた字を見ていると
まだまだ大丈夫、書けるよと思えてきたのです。
年賀状は無理かもしれないけれど、

父さん、これからも筆を持って、素敵な字を書いてね。